二次創作同人の収益とPixivFANBOXについて思っていること

GWの大型イベントの無配原稿が終わっていない。
でも、どうしても書いておかないとこのことばかり考えてしまってもやもやして手につかないので
先に書いてしまうことにした。

子供のころから漫画が大好きで中学生のころから同人誌即売会に参加し始め、
絵に興味を持ち、美大に進学し
二次創作同人活動も一次創作の活動も断続的にではあるが十年ほど続けているアラサーオタクで、即売会では島中に常駐するピコ手サークル主です。
作り出す楽しさも、素晴らしい作品に出会った時のえも言われぬ感動も、入稿間際のあせりもよく知っている。
好きな声優さんやアイドルのコンサートや2.5舞台やアニメの公式イベントの全通にも余念がありません。
マンレポを熟読していたので、日本における二次創作同人の成り立ちや仕組みのあらましも年齢の割に理解している方だと思います


故意的な海賊版や脱税、同人グッズなどについては除外しここでは主題の対象にしません。

 


Twitterのトレンドワードに連日「PixivFANBOX」が上がっている。
これを読んでいる方々はその概要はご存知であろうからその説明は省く。

このサービスが発表された時に
日本で起こり得るだろうなと想定していた事象がまさに巻き起こった。
「二次創作作品の投稿の可否」である。
描き手、ROM専問わず二次創作の投稿に対しては否定的な意見が大半を占めているように見えた。

その理由の多くは「二次創作同人活動は原作や版権元の黙認のもとお目こぼしで何とか存続しているもの。
自作であっても公認されていない創作活動で収益を得る第三者の存在は許されない」
という大意のものであった。
これはPixivなどのwebメインのコンテンツに限らず、二次創作の同人誌に関してもよく目にする常套句である。

なるほど。
その意見は道理にかなっていてもっともである。理解できる。

しかしさて、その主張をしているアカウントのbioのほとんどにPixivのURLが載っている。
ROM専買い専と思しきアカウントにもPixiv上の作品を紹介するツイートが散見される。
つまり、この主張をしている人たちはれっきとしたPixivの利用者であり、Pixivの顧客である。
当然のことだが、Pixivは企業が設立運営しており、Pixivを閲覧した時点で
少なからずPixivには広告収益が入っている。
原作者でも版権元でもないPixivが二次創作同人活動をする顧客の存在により、収益を得ているという事実がある。

私が理解しがたいのはここである。
二次創作作品によって権利者以外が収益を得ることが許しがたいと言いながら
Pixivという全くの第三者が収益を得ていることはなぜ許すのか?という疑問だ。

これはPixiv以外の二次創作作品を扱う多くの団体にも該当する。
コミケ準備会、スタジオYOU、青ブー、赤ブーなどの即売会の運営元
同人誌やポスターの印刷会社
二次創作活動者の顧客が多くを占めるコミスタ、Sai、アルパカ、アイビスなどのペイントソフト開発元
タブレットやPC、アナログ原稿作成の画材の販売元etc…
挙げればキリが無い。

Pixivをはじめ、これらの団体や企業の顧客には
もちろん一次創作しかしない、したことがないというクリエイターも含まれるだろう。
しかし大半は二次創作に関わるものであることはワード別投稿作品数やサークル活動内容からして明白である。

 


矛盾しているな、と思う。
原作者や版権権利者以外の収益を嫌いながらも、自らその第三者へ直接的に金銭を払ったり
収益になる行動を積極的に取っている。
二次同人サークル活動者の中には「私は利益出てないから大丈夫」という知人がいる。
その知人はもちろんコミケや青ブーに参加費を支払い、同人誌印刷所に利益をもたらしている。
専業二次同人大手サークルの同人誌を揃えている。
一体何が「大丈夫」なのか、皆目見当が付かなかったが
自分が少数派意見であることも自明だったのでそれ以上何もきく勇気はなかった。

オタク活動以外でも、世の中のあらゆる事に様々な意見や見地がある。
どちらが正しくてどちらが間違っているなんて明確に決まっていることのほうが少ないかも知れない。
それでいいのだ。みんなそれぞれ自分の信条や正義がある。
二次創作だってそうだ。
二次創作活動で権利者以外が収益を得ることが許せないという人の考えに
私は賛同出来ないが理解は出来る。

でも、だったらちゃんと自分の考えを押し通して貫いて欲しい。

「PixivやTwitterはみんなが観てくれるから利用する
いっぱい印刷したいから同人誌印刷所を利用する
サークルには利益が出てないから私はセーフ」
そんな矛盾している人の主張には何の説得力も芯も感じない。
聞く耳を持てない。

「私は権利者以外の収益が許せないから二次創作同人って大嫌いなの。
web作品も本現品も見たくないわ。
版権元の許諾を得ていない即売会や同人印刷所も
二次創作者に画材や機材をもたらす企業もどうかしてるわ」
もしこんなことを言う人がいれば、私とその人からは嫌われるだろうし相容れないが
私はその人を「自分の考えを貫いている立派な人だな」と尊敬する。

 


ここまで書いた内容で察していただけているであろう通り、
私は二次創作同人活動で収益を得る版権元以外の第三者の存在に否定的な感情はない。
むしろどちらかと言うと肯定派である。

冒頭に書いた通り、長いオタク生活の中で
版権元に自分が出来得る限りのありったけのお金や時間をつぎ込んできた。
これまで好きになった作品や芸能人の全てで
私はかなりヘビーな部類のファンだったと思う。
握手会やサイン会で「この前も来てくれたよね?」と声を掛けられたこともある。
好きなものを自分が全力応援させてもらうことはファン冥利に尽きる。
これからも追いかけさせてください私にあなたの素敵な作品やパフォーマンスをどうかたくさん拝見させてください――。

この「原作者や版権元に持ち得る限りのお金や時間をつぎ込む」という大前提と経験を経て思う。

版権元に収益をもたらさないファン活動や二次創作活動は存在する。
してもいいと、少なくとも私は思う。

最たる例が二次創作同人活動だが、他にも
推しキャラクターのイメージカラーの食器やアパレルを揃えたり
サイン会で憧れの声優さんや漫画家の先生にお会いするのだから
美容院に行ったりネイルを変えたり
フィギュアを飾る棚やアクキーを飾るコルクボードも買って
遠方の同じファンのフォロワーとオフ会して
いつもより豪勢なものを食べて「○○くんは世界一!」って叫ぶ。
この行動で版権元にお金は一銭も入らないが、これを非難する人は何故かいない。
「そんな買い物や美容代や食費や交通費があるのなら
もう1セット原作のブルーレイBOXを買え」とは言われない。

 

 

二次創作同人誌を読んで手が震えたり、心をさらわれて眠れなかった夜はありませんか。
私には数えきれない程ある。
何時間もかけて感想や応援のメールや手紙を書いたこと、
「前回の本も面白かったです、今回も楽しみにしています」と
憧れのサークルさんに顔を真っ赤にしながら伝えた中学生の頃のこと、
自分が二次や一次の創作活動や始めて、初めてそう言われた日の思わず走りだしたいような嬉しさ。

その日を思い出すと、二次創作にも、頒布代金以外のものを支払うだけの価値はあってもいいとどうしても思う。
PixivFANBOXの二次創作作品投稿に批判的になれない。

海外の二次創作同人の金銭的支援サービスでは
「二次か一次かはともあれ技術料や労力もしくは時間への対価として支払う」という考えらしい。
この考え方に私は近いかもしれない。
(※外国語や海外の同人文化に明るいわけではないので、もし間違っていたら申し訳ない。
ご了承いただきたい)
海外が寛容で正しくて、日本は閉鎖的で間違っていると言うつもりは毛頭ない。
ただ、海外のこのサービスの利用者は少なくとも
二次創作目的で公式以外に金銭を授受したり広告収益の一端を担っておきながら
同人活動で利益が出てはいけない」と言っている矛盾した人たちよりも
筋が通っているし理解出来る。


権利者(いわゆる公式)以外に収益がいくことを拒否していたらファン活動はとても制限される。
先に書いた通り、二次創作物目的での即売会の参加費も交通費も払わず
ペイントソフトもアナログ画材も購入せず、同人誌印刷費もコピー代金も払わず
サーチエンジンも二次創作を含むコンテンツが存在するSNSもいっさい閲覧しない。
推しキャラクターを連想させるような雑貨も一切購入しない。
そのお金を1円でも多く公式の商品や入場券を買うことに充てる。
掲示板かどこかで「それならゴミ捨て場で拾った古紙や画材で描いたものを徒歩圏内の友達と見せ合うくらいしか出来ないね」
と言うような旨が書かれていたが、まさしくその通りだと思った。

自分の人生の大半を占めるオタク生活の中で、一次も二次も創作活動をした経験の中で
導き出した私の答えだ。
権利者以外の収益が気に食わないのなら
即売会の参加費も二次創作の為の画材購入費も同人誌の印刷代も頒布のための代金も支払わず
PixivもTwitterもピクブラもwebサイトも二次創作目的で使用するべきではない。
私は自分の言っていることが極論とも暴論とも思わない。
自分たちの矛盾を棚に上げて、二次創作で権利者以外に収益がいくことを許せないと言われても納得できない。

そういう矛盾を持ち合わせている人たちの意見で
どうか私が好きな二次創作作家さんを支援したいという気持ちを踏みにじらないで欲しい。
主張をするなら、まず自分の行動と一致させてほしい。

生まれてこの方一次創作しかしたことがなく、楽曲のコピー演奏や二次創作物を能動的に閲覧したり入手したりしたことが
一度もないという方に批判されたら流石に頭が上がらないが。

 

 

それから、これは版権元の方にお手をわずらわせてしまうことだけれど
版権元や原作者の方々の中にも、もしも
同人誌やweb漫画の二次創作が嫌な方々がいらっしゃるのなら
どうかはっきりおっしゃって欲しい。
幸いにして私が現在活動しているジャンルでは
版権元が割かし二次創作同人活動に関しては寛容である。
しかし、私が今後作るかもしれない作品の中にはもしかすると
「二次創作同人は嫌いだが、しぶしぶ我慢している」という原作者の方が
いらっしゃることがあるかも知れない。
もし、私がそれに該当することがあれば
私はすぐにwebにアップロードしたイラストや漫画を削除し、自作の同人誌の書店在庫も何もかも返本し破棄し、
その作品に関わる一切の同人活動に携わらない。他のサークルの同人誌も入手しない。
原作を作られた方々にはその権利があるし、それでがっかりするような
原作者の意を重んじられない者もファンなどではない。
うしろ、自分が不快にさせる行動をとったことを申し訳なく感じるだろう。

すでに有名どころの複数の版権元で同人活動ガイドラインを設けているところがあるが
もっとそれが浸透して欲しいと思う。
新しい作品にハマって二次創作イラストや同人誌を制作しようとする度に
「これ原作者の先生、嫌じゃないかな?」と不安になりたくない。
利用料が必要なら支払いたいのでそうおっしゃって欲しい。
同人誌印刷所の利用の可否とかもっと知りたいのだ。

 


さて原稿に戻ります。明日がヤマです…
恥ずかしながら私はろくな文章を書いた経験がなく、誤字脱字や読みづらい表現も多々あったかと思います。
あまりに少数派の意見で、閲覧する方もとんどいらっしゃらないかとは思いますが
ここまでお読みいただきましたこと、心からお礼申し上げます。
ありがとうございました。